thinking DESIGNでは、当初「emotional」という言葉を使っていました。しかし、日本語で「感情」と言うと、多くの人は「その瞬間に湧いた気分」や「一時的な好き嫌い」のように受け取ります。
たとえば、
「これ面白いね」
「ニュースを見て暗くなる」
「うっ、気持ち悪い」
「なんだかイラつく」
こうしたものも確かに感情です。しかし、thinking DESIGNが扱っているものは、それだけではありません。
私たちが見ようとしているのは、瞬間的な気分ではなく、その人が世界をどう見て、何に反応し、何を大切にし、どのように考え、どのように行動するのかを支えている深い土台です。
そのため、「感情」ではなく、感情価値基盤という言い方に変えました。
感情価値基盤とは「世界の見え方を決める土台」である
感情価値基盤とは、瞬間的な感情そのものではなく、感情が生まれる前に、その人の認識・判断・行動を方向づけている土台です。
thinking DESIGNのテイスト理論では、人は目の前の世界をそのまま見ているのではなく、感情がフィルターのように働き、知覚情報を増幅しながら認識していると考えます。つまり、人はそれぞれの感情的なフィルターを通して世界を見ている、ということです。
たとえば、同じ雨の日でも、
「落ち着く」と感じる人もいれば、
「憂鬱だ」と感じる人もいます。
「植物が喜んでいる」と感じる人もいれば、
「予定が崩れた」と感じる人もいます。
雨という現象は同じです。しかし、その人が持っている感情価値基盤によって、意味が変わります。
つまり感情価値基盤とは、
世界をどう意味づけるかの根本的なフィルターなのです。
感情価値基盤は、思考・行動・価値観につながる
感情価値基盤が重要なのは、それが単なる気分では終わらないからです。
感情価値基盤は、その人の思考パターン、行動パターン、価値判断、人生観、さらにはデザインや言葉の好みにまでつながっていきます。
thinking DESIGNでは、テイストの階層を次のように捉えています。
知覚情報
↓
感情的基盤
↓
思考パターン
↓
行動パターン
↓
人生観・価値観
↓
表現様式
つまり、表に出ている「好きなデザイン」「選ぶ言葉」「購買行動」「働き方」「人間関係の作り方」の奥には、感情価値基盤があります。
だから、感情価値基盤を理解することは、単に「その人が今どう感じているか」を知ることではありません。
その人がなぜそう考え、なぜそう選び、なぜそう生きようとするのかを理解することなのです。
「感情が分かっても意味がない」と言われた理由
「感情」という言葉だけを使うと、どうしても誤解されます。
「感情なんて一時的なもの、ビジネスとは関係ない」
「その日の気分で変わるものを分析しても意味がない」
「好き嫌いが分かっても、ビジネスには使えない、むしろ性格判断の方が使える」そう言われるのは自然なことです。
なぜなら、多くの人にとって感情とは、瞬間的で、不安定で、個人的で、測りにくいものだからです。
しかし、thinking DESIGNが見ているのは、感情の表面ではありません。見ているのは、感情の奥にある「安定した傾向」です。
どんな場面で希望を見るのか。
どんな場面で不安を感じるのか。
何に安心するのか。
何に怒りや違和感を覚えるのか。
何に美しさや意味を感じるのか。
何に未来を感じるのか。
このような傾向は、その人の選択や行動を長期的に形づくります。だからこそ、「感情」ではなく「感情価値基盤」と呼ぶ必要がありました。
感情価値基盤は、ブランドやマーケティングに使える
感情価値基盤を理解すると、ブランドや広告の設計は大きく変わります。
従来のマーケティングは、年齢、性別、所得、地域、職業などで人を分類してきました。しかし、同じ40代男性でも、何に価値を感じるかはまったく違います。
ある人は革新性に惹かれる。
ある人は安心感に惹かれる。
ある人は美意識に惹かれる。
ある人は社会的意義に惹かれる。
ある人は効率に惹かれる。
ある人は人とのつながりに惹かれる。
この違いは、属性だけでは見えません。その奥にある感情価値基盤を見なければ、なぜその人に響くのか、なぜ響かないのかは分からないのです。
thinking DESIGNのステージ活用では、従来の年齢・性別・所得といった表層的な分類を超えて、感情価値基盤、価値観、世界観に基づいて顧客を深く理解することが重要だと考えました。
感情価値基盤は、広告表現を「なんとなく感動させるもの」にするためのものではありません。
誰に、どんな言葉で、どんな世界観を提示すれば、深く共鳴するのかを設計するための基盤なのです。
感情価値基盤は「その人の人生のOS」である
感情価値基盤は、例えればPCで言えばOSのようなものです。
同じ情報を入力しても、OSが違えば処理のされ方が違います。
同じ出来事を経験しても、感情価値基盤が違えば、意味づけが変わります。
ある人にとって失敗は「終わり」かもしれません。
別の人にとって失敗は「学び」かもしれません。
ある人にとって変化は「危険」かもしれません。
別の人にとって変化は「可能性」かもしれません。
この違いが、人生の選び方、仕事の仕方、人との関わり方、ブランドへの反応を変えていきます。
だから感情価値基盤とは、単なる心理分析ではありません。
人が世界をどう見て、どう生きようとするかを決める、深層の価値観システムです。
まとめ
感情とは、瞬間的に表れる心の動きです。感情価値基盤とは、その感情がどのように生まれ、どの方向に動きやすいかを決めている土台です。
一瞬の気分ではなく、人の思考、行動、価値観、表現、ブランドへの共鳴を生み出す根本の原理。
これをValues Foundation Matrix(VFM)感情価値基盤という。
実をいうとclaudeやchatGPTと相談してこの名称になったのですが、もっというとAIがなければ感情価値基盤は単なる思いつきに終わった可能性すらあります。
これについては、次回お話しすることにします。