20世紀の巨人たちが築いたもの

20世紀後半、広告制作の"巨人たち"は大きな仕事を成し遂げました。マスメディアという新しい器に、新たな概念としてブランドを展開したのです。テレビコマーシャル、新聞広告、ラジオ、屋外広告——企業はこれらを通じて生活者に語りかける手段を手にしました。ロゴやタグライン、トーン&マナー。これらの語彙を体系化し、ブランドを管理するという営みを一つの産業として確立したのです。

ナイキもコカ・コーラもトヨタも、20世紀のブランディングの方法論なしには今の姿にはなっていないでしょう。私たちは先人の仕事の上に立っています。

しかし、前提が崩れた

そこには「情報は限られた一方向だけに流れる」という前提がありました。企業が発信し、生活者がそれを受信する。ブランドは企業の所有物であり、管理の対象である。生活者はその受け手であり、調査され、セグメントされ、ターゲティングされる存在でした。マスメディア時代のブランディングはこのような前提の上に築かれています。

しかし今、SNSの登場によってその前提は崩れてしまいました。個人の投稿が一晩で数百万人に届いてしまう。つまり、SNSは生活者を発信者に変えたのです。ほどなく、生活者の情報流通は企業がブランドを管理する速度を追い越すことになりました。

そして今、生成AIの登場がさらにその構造を変えています。ChatGPTやClaudeのようなAIを通じて特定の企業について調べる人が増える中、AIは断片的なSNS投稿でなく、体系化された思想を読み取って答えを返します。企業が届ける相手は、もはや人間だけでなくなりました。

さらに、何より大きいのは生活者自身が変わったことです。

商品を買うだけの存在から、企業の物語に参加したい存在へ。一方向に届けられるメッセージを消費する立場から、企業とともに"意味"を創っていく立場へ。

かつての方法論は、新しい生活者には届きにくいものになってしまいました。彼らは「受信者」として設計されたブランディングには感情を動かされなくなっています。仮に届いたとしても、そこにとどまることなく通り過ぎてしまいます。

巨人たちの構造的ジレンマ

かつての"巨人たち"はそれに気づき、その上で転換に苦慮しています。大量の人員、大量の設備、大量の既存クライアント。これらの資産が重すぎて、構造的に方法論そのものを書き換えることができないのです。これはどの業界も抱えている歴史的ジレンマです。

そして、この空白に私たちは立っています。

福岡で生まれた小さな事務所

thinking DESIGNは福岡で生まれた小さな事務所です。二人の創業者とAIとの共犯で運営しています。従来の広告代理店の基準では「会社」と呼ぶにはあまりにも小さすぎるかもしれません。しかし、小さいからこそできることがあります。

私たちは、ブランドを管理するのではなく、ブランドを活かし続けることを選びました。完成させるのではなく、進化に同期させる。企業の感情座標が動けばブランドが動く。顧客との関係が深まれば表現が変わる。ブランドは記号の集合ではなく、呼吸し続けるひとつの生きものである——私たちはそう考えています。

私たちの立場

これは、20世紀の方法論の改良版ではありません。ブランディングという営みの定義そのものを書き直す試みです。

私たちが持ち込もうとしている3つの装置

VFM理論 企業の感情座標を富貧軸と明暗軸の二次元で捉える独自のフレームワーク。事業者の分析から帰納された感情経営の地図です。「今、この企業はどの感情ステージにいるのか」を可視化します。
共犯者論 顧客を「買う人」ではなく、「共に進化する仲間」として捉える関係性の理論。国内外で人気を博すラーメンチェーン「一風堂」、海外からも高く評価されているファッションブランド「ミナ ペルホネン」、そしてApple——業界を書き換えた企業に共通する成功パターンを、誰もが設計可能な方法論として体系化しました。
GrowSync 企業の進化に同期して、サイト自体が質的に変容し続ける設計思想。AI時代のブランドの中枢として機能する、進化系のサイトの概念です。

これら3つの装置は別々の道具ではなく、ひとつの思想による3種類の表現です。

企業は顧客とともに進化する生きものである。
この前提を理論として、関係性として、実装として、それぞれの次元で具体化したもの、それが私たちの仕事です。

私たちが共犯する相手

私たちと共犯する相手は限られています。役に立つことを組織の存在理由にしている経営者。顧客を数字ではなく仲間として捉える経営者。完成したブランドではなく進化し続けるブランドを望む経営者。AI時代に自社の中枢をどう設計するかを考え始めた経営者。

かつて築かれた20世紀の方法論にどこか違和感を感じている。しかし、その違和感をまだ自分の言葉にできていない——そういう経営者のために、私たちはこの小さな会社を始めました。

私たちは、かつての広告の巨人たちに挑んでいます。ただし、敵は個別の企業ではありません。役目を終えつつある時代の方法論です。

小さな事務所から始まるこの挑戦の行方を、あなたとともに見届けたいと思っています。

Founders

設立者

Representative

東 裕治

Yuji Higashi

グラフィックデザイン、Webデザイン、コーポレートアイデンティティなど40年以上のデザインキャリア。会社を3社設立。大義からテイストをインターフェイスとするVFM(Values Foundation Matrix)の概念を構築。

「概念破壊」——新しい座標系を創る

Co-Founder

丸山 砂和

Sawa Maruyama

35年以上の広告コピーライティング、編集・編集長及びライティングのキャリア。コンセプト統合・コピーライティング・品質管理を担い、AIが生成した実装を人間の感覚でフィルタリングする役割を担う。

「概念統合」——理論を言葉に着地させる

二人の役割

東が「概念破壊」、丸山が「概念統合」。この相補的な関係がthinking DESIGNのチーム構造の核心です。VFM理論と意図を東が言語で提供し、ClaudeなどのAIが構造化・プロトタイプを生成し、丸山が人間の感覚でフィルタリング・コピーライティングを行う。三者の協働がthinking DESIGNの方法論そのものです。

会社概要

会社名:thinking DESIGN合同会社
共同代表:東裕治 丸山砂和
設立:2025年9月
住所:福岡市中央区天神2−2−12T&Jビルディング7F